2004.10.26
すっかり風邪引き生活を送っている白林檎である。ぼくには生来アレルギー鼻炎の気があるため、常にティッシュを手放せない。そのようなわけで、保湿ティッシュを発明した御仁には是非ともノーベル医学賞か何かを差し上げたい気分である。もちろんぼくはノーベル賞の選考委員でも何でもないから、そうなればいいなと願うだけではあるのだが、実際ぼくが本当に選考委員だったなら、まず間違いなく彼を医学賞にノミネートする事であろう。保湿ティッシュはナントカ遺伝子の発見などよりずっと臨床医学に貢献している。
ノーベル賞で思い出したが、昔ぼくは
タンタンの冒険物が好きでよく読んでいた。タンタンというのはベルギーあたりの漫画で、ルポライターのタンタンがいろんなことに首を突っ込むうちに事件に巻き込まれて云々というようなシリーズである。
ちなみに彼の名は原語で
TINTINと綴るが、これはもちろん「タンタン」と発音するのであって、他の何物でもないから、婦女子諸君が顔を赤らめる理由などはどこにもない。
タンタンシリーズはもちろんベルギー語で出版されているのだが、日本語訳の本が
福音館書店から発売されている。この日本語訳というのが非常にクオリティが高く、訳語として優れているのみならず、ギャグまでローカライズするという手の込みようである。
さて、そのタンタンシリーズのひとつに「ふしぎな流れ星」という作品がある。北極に謎の流れ星が落ち、その調査にタンタンと科学者一向が向かうが……という内容なのだが、ストーリーの都合上、科学者ひとりひとりの紹介というのが途中にある。もちろん、架空の人物なのであるが、その紹介文というのがいちいち凝っていて面白い。その中の一説に「ノーヘル物理学賞」というのが出てくるのである。
小学生当時は、単にダジャレとして面白かった。このノーヘル賞というのはおそらく「脳減る」もしくは「能減る」で、ヘルメットをかぶらずにバイクに乗る事ではないと思われる。少なくともダジャレとしてはその方が面白い。
年齢を重ねるにつれて、ダジャレとしてよりも批判的なユーモアとしての側面から、このノーヘル賞が頭から離れなくなった。ノーベル賞を受賞するような学者は当然かなりの権威であるのだろうが、その成果は一般人には容易に理解し難い。それをさもありがたがって、古くは湯川博士、最近では田中さんを国の英雄の如くまつりあげるのは実に滑稽なことだ。と、まあ、そういう思いを訳者はこめたのではないかな、と、思うようになった次第である。
そんなわけで、ノーベル賞選考委員会も、ナントカ遺伝子の発見などといった小難しいことばかりではなく、保湿ティッシュの発明などの身近な貢献にスポットを当ててみるのも、悪くないんではないかと思うのである。