2005.9.1
9月である。先ごろ公示も行われ、「郵政選挙戦」がますますヒートアップしている。
産経の今朝の記事で首相公選論が展開されていた。今回の総選挙は事実上の首相選挙になるのではないか、という主旨である。確かに時代は二大政党制へと向かっているように見えないでもないし、選挙戦を制した政党──おそらくは自民党か民主党のどちらか──の党首が首相に指名されることは間違いなかろうが、容易には首肯しかねる論調だ。民主党は自民党の向こうを張れるほど盤石な勢力ではない。
街頭演説で自民党の安倍幹事長代理は民主党を「フワフワした」と形容した。これは別に、民主党の支持基盤が都市部にしか存在しないとか、総論賛成各論反対で対案も出さずに騒ぐしか能がないとか、トップがジャスコ岡田であるとかいったことを皮肉っているわけではない。彼の党は党内勢力図が極めて不安定な様相を呈していることを言っているのである。
民主党はそのほとんどが自民党からのスピンオフ組から構成されていると思われがちだが、実は旧社会党などの革新勢力を相当数抱えている。革新と保守が合体した新時代の政党と言えば聞こえは良いが、実態は要するに烏合の衆なのだ。郵政民営化に限らず、主張が二転三転してちっとも定まらぬのは、野党として反対せねばならぬという妙な使命感からだけでなく、複雑な党内事情を反映しているのである。岡田代表がいまいちぱっとしないのも、本人のせいだけではない。党内事情が派手な発言や公約を許さないからだ。
こういった背景の中で「二大政党」を強調し、事実上の首相公選だなどと言われても困るのである。産経の記事では小泉首相も首相公選制を持論としていることを挙げた上で論じており、自民党もそれを望んでいるかのようなミスリードを誘うが、これは大きな誤りだ。第一、小泉首相自身はそんなことを今回の選挙にからめて発言していない。郵政民営化を国民が望むか望まないか、それを問うための選挙だと、解散の時から公言している。どちらかといえば、この論は、小泉自民党の郵政選挙から二大政党対決の構図へ何とかして持っていきたい岡田民主党の主張に、まんまとのせられてしまっているのである。マスコミの良識、天下の大新聞である産経が、そんなことでは困るのだ。恣意的な報道は朝日だけで沢山である。
ところで参議院で否決された結果の衆院解散で、自民党が政権を取った後に本当に民意が反映されて参議院でも可決されるか、不思議に思う向きも多いだろう。衆議院議員が入れ替わったところで参議院の面子が変わるわけではないし、考えだってそう変わる物ではなさそうだ。しかし、これが実現されてしまうのである。何故か。
今回、自民党は、郵政反対派議員を切り捨てた。これは小泉総裁の独断ではなく、執行部の決定だ。もう少し単刀直入に言えばポスト小泉と目される安倍幹事長代理もその方針を継ぐ公算が高いということである。その上で今回の選挙戦を制すれば何が起きるか。郵政民営化法案が衆議院で再度可決されることは間違いないところだが、それに加えて参議院に席を持つ反対派自民党議員は恐慌をきたすであろう。すなわち、再び反対すれば、次回の参院選では党公認を失うことが確実となるからだ。
この観点から言えば、今回の総選挙は、郵政民営化だけでなく、自民党内部の改革にも大きく寄与する選挙であると言える。まさに「自民党をぶっ壊してでも改革を断行し」つつあるのである。重大な立場にありながら、これだけ自らの信念を貫ける人も珍しい。白林檎としては、小泉首相を完投させてみたいと思う。